ヤクシカの急増による問題

ヤクシカとヤクザルの急増は、生物多様性への影響が懸念される。「ヤクタネゴヨウ調査隊」隊長の手塚さんによると、増えすぎたヤクシカが森の下草を食べつくしてしまうため、もともと生育していた植物種が失われていっているという。さらに、ヤクシカが樹木の再生に必要な「ひこばえ」と呼ばれる新たな芽を食べてしまうので、枯れはじめたり、病気になった樹木が再生できず、いずれ森そのものが存続できなくなってしまう危険性もあるそうだ。

そもそもヤクシカが増えた原因のひとつは、ヤクシカが減りはじめた時に、人間がヤクシカ保護の規制を極端に強化し、捕獲を全面的に禁止したことにあるのだとか。

 

屋久島では、近年、ヤクシカの生息数増加に伴い、世界遺産地域に指定された箇所を含む採餌被害が激しくなっており、屋久島の生態系保全上大きな問題となるとともに、果樹の樹皮剥ぎや食害などの農作物被害も発生しています。

このため、ヤクシカの保護管理の目標を定めた「特定鳥獣(ヤクシカ)保護管理計画」を鹿児島県が策定しており、環境省・農林水産省では、「屋久島国立公園 屋久島生態系維持回復事業計画」を策定し、暫定的な個体数調整の目標と対策を示しています。

また、屋久島世界遺産地域科学委員会の下に「ヤクシカ ワーキンググループ」を設置し、ヤクシカ被害対策について、モニタリング調査を行うなど、科学的知見に基づいた順応的管理を行っています。

これらの計画に沿って、国等関係機関、地元自治体、猟友会等が連携して、植生保護柵の設置やヤクシカの個体数調整を行っており、林野庁九州森林管理局においても、職員自らが、括りわなによるヤクシカの捕獲に積極的に取り組んでいます。

 

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